リンクを張りたい人のための無断リンク論

要約

 様々な理由から、自分のページにリンクを張られるのを快く思わない人や、リンクを張ったときに連絡を望む人がいます。そういうページにリンクを張りたいと思ったとき、僕はそもそもどうしてリンクを張りたいのかを考えて、その目的を達成するにはどうするのが良いかを考えます。やっぱり打算的な僕の「無断リンク論」です。

先行公開

 一部の節が抜けている状態で公開しています。

初めに

 このページでは、リンクに条件を付ける側にも理由があってその理由には一理あること、条件に反するリンクを張りたくなる側にも一理あることを、僕のわかる範囲で書きます。

 無断リンクがウェブの侵すべからざる基本的権利であるか否かとか、「無断リンク禁止」と書かれたページを見ると鬼の首でも取ったかのように騒ぐ人についてどう思うかとか、そういうことは明示的には書いていません。

リンクに条件を付ける理由

 「私の許可なく当サイトにリンクを張ることを禁止します」とか「トップページ以外にはリンクを張らないでください」とか「リンクを張ったら連絡をください」とか、もっと単純に「当サイトへのリンクを禁止します」とか書くことにはどういう効果があるでしょうか。法的に効力があるかどうかは知りませんが、少なくとも著作者の強い希望が閲覧者に伝わるという効果はあります。

 閲覧者にはページが読める状態になっているのにリンクを張ってほしくないというのはどういう状況でしょうか。本当は閲覧もしてほしくないという場合と、閲覧するときには所定の手順に従ってほしいという場合があると思います。また、じつは著作者は字義通りのことを求めていないという場合もあると思います。

理由 1: 人払い

 ウェブで公開しているのに、閲覧してほしくないと言うと、一見矛盾しているように思うかもしれませんが、だいたいどんなページも想定している閲覧者というのがあります。「無断リンク禁止」というのは、想定読者以外には閲覧してほしくない、という気持ちの現れとして書かれることがあるようです。それは僕にも理解できます。僕はそうは書かない、というだけです。詳しくは別文章にしてある「想定読者の表示と発言に伴う責任」を参照してください。

理由 2: 手順の要請

 閲覧してほしくないわけではないけれど、閲覧するには一定の手順を守ってほしいという場合もあります。例えば次のような場合です。

 これは、技術的には「無茶言うな」でおしまいの話です。普通はどのページだって検索サイトで検索結果として表示される可能性があるということを考えただけでも、この要請は破綻していると思います。でも、だったらどうすればよいかというと、次のようにいくつか方法はありますが、どれも欠点もあるので良い解決方法はあまりないのが実情です。

「ロボットよけ」をして検索サイトに表示されないようにする
 検索結果として表示されなくなるので、検索サイトから直接飛んでくる人はいなくなりますが、その分はトップページに来るのではなく、来なくなります。
ウェブページの集まりではなく一つのウェブページか Flash など他の形式で作る
 作るのが大変かもしれません。また、文章だったら読みづらくなりそうですし、文章以外でもいろいろ不便そうです。また、最初に訪れる人にはトップページから入ってほしくても、その他の人は途中のページにブックマークできるようにしたい、という場合にも使えません。
Referer ヘッダーを検査する
 プライバシーを気にして Referer 情報を送らないようにしている人もいて、そういう人はブックマークで飛んでくる人と区別が付きません。また、技術的に難しい場合もあります。

 結局「トップページ以外にはリンクしないでください」などと書くのがせいぜいという気がします。

理由 3: 反応がほしい・交流をしたい

 ウェブサイトの運営者の中には、閲覧者からの反応を望んでいる人がたくさんいます。でも、感想を書いてくれる人なんてほとんどいないそうです (僕なんて、今までもう 10 年近くインターネットに接してきて、感想を書いたことのあるウェブサイトは 10 個もありません。最近ようやくちゃんと書くようになってきましたが。極端でしょうか)。サイト運営者の中には、リンクの報告や許可依頼をもらうことで「読んでもらっているんだなあ」と感じることができて嬉しいとか、それをきっかけに継続的に読者と交流できると嬉しいとか、そういう思いから「リンクをしたら連絡をください」とか「リンクをするのには許可を求めてください」と書いている場合があると思います。

 事実、このウェブサイトを作るにあたって、「リンクをしたら連絡をしてもらえると嬉しいです」というサイトにはいくつかリンクをしていて、そういうサイトにリンクした際には連絡しているつもりです。さすがに「リンクしました」とだけ書くわけにはいかないし、書こうと思えばいろいろ書くことがある (べつにリンクをすることが目的というわけではありませんから) ので、感想などを添えてリンクの報告をしています。

理由 4: リンクの悪用の防止

 以前は多くの公的機関が無断リンクを禁止していました。その理由としてよく聞かれたのは、次のようなものです。「閲覧者は自分が見ているウェブサイトに公的機関へのリンクがあると、自分の見ているサイトがリンク先の公的機関によって何らかの『お墨付き』あるいは承認を得たと勘違いする可能性がある。さらに、その勘違いを悪用しようとして公的機関にリンクを張る悪者も現れるかもしれない」。この理屈に対する反論としては、主に次の二つがあります。

  1. 「無断リンク禁止」と書いても悪者は従わないので悪用を防止する効果はない。まっとうな目的 (関連するページにリンクを張るとか) でリンクを張りたい人だけが、リンク条件のせいでリンクを躊躇したり許可を求める間リンクが張れなかったりするという不利益を被る。
  2. そもそもリンクはリンク元が一方的に張れるものなのだから、リンクがリンク元に何らかの「お墨付き」を与えるというのは誤解である。しかし、無断リンクを禁止していると主張することは、リンクがすべてリンク先の許可を得ていることを意味し、この誤解を助長することになる。 (これに加えて、公的機関は「リンクにはリンク元にお墨付きを与える効果はない」ということを啓蒙するべきだ、という主張が続くこともよくあります。)

 僕は反論 1 にはあまり賛成しません (「無断リンク禁止」と謳うことには悪用を防止する効果が少しはあり、まっとうな目的でリンクを張りたい人の被る不利益との間でバランスが必要になると思います) が、反論 2 には賛成です。なので、リンクを張るのに許可は不要とする公的機関が増えてきたのは良いことだと思います。

理由 5: 自己満足

 「無断リンク禁止」と書くことで偉くなった気分になって満足、という場合もあると思います。自己満足でウェブサイトを作っている身として、自己満足が悪いことだとはまったく思いません。後で恥ずかしい思いをすることもありますが。

 などと抽象的に書いても信じてもらえないこと間違いなしなので、リンク条件ではありませんが、具体的に僕が以前このサイトについてで書いていた当サイトの利用条件を例に挙げます (もうこの条件はありません)。

 今のところ、転載は禁止です。ただし、これは著作権法第 32 条で認められている引用を妨げるものではありません。

 何が嫌かって、二つ目の文が虚栄心と自己満足の塊です。偉そうに「著作権法第 32 条で認められている引用」などと言っているのが嫌な感じです。著作権法上の「引用」がわからない人がリンクをたどると、著作権法の条文が出てきてますますわからないという、人を馬鹿にしたリンクも最低です。さらに、二つ目の文はなくてももともと著作権法上の「引用」は認められるので、じつは書く必要はないのです。こんなのは、わからない人を馬鹿にするために書いたようなものです (だから恥ずかしくなって消したんですってば)。

条件違反のリンクを張る理由

 後で書く予定です。

「で、 fcp はどうするの?」

 まず、簡単な方を済ませておきます。このサイトへのリンクについては、いろいろ思うところはありましたが、結論は簡単です。「このサイトと管理人について」で、このサイトへのリンクはご自由にどうぞ、と書いてあるのは、なるべく自分に負担をかけずに、まっとうな目的でリンクしようと思ってくれる人に配慮したいからです。許可を求めるメールをもらっても、すぐに返事ができるとは限りません。副次的な理由としては、どんな条件を設定したところで僕にはその条件を遵守させる方法がないからというのもあります。

 次に逆の場合、つまり僕からどこかのページにリンクを張る場合について書きます。リンクを張ろうと思った場合、そう思う理由があるわけです。普通は文章を書いていて、その中で関連するページにリンクを張ることで、何か目的を達成したいわけです。でも、リンク先のリンク条件のせいで思っていたようなリンクが張れない場合があります。そういう場合、次のような選択肢があると思います。

 多くの場合、目的と選択肢がわかっていれば、どれがいいかはわかるものです。しかし、時に僕とリンク先と当サイトの閲覧者の三者のうち二者以上の利益が反して、あちらを立てればこちらが立たず、という事態になることがあります。そういうときには、リンク先の利益を考えるのも、当サイト閲覧者の利益を考えるのも、結局は僕のためだということを思い出すようにしています。ウェブで公開されている小説が面白いと思って紹介したい場合、小説の作者に嫌がられたくはないに決まっています。これは僕のためです。当サイト閲覧者の便宜を図るのも、僕が読んでほしいからであって、僕のためです。そうしたら、個々の場合に誰が一番重要かがわかってきます。

 今までにリンクで迷った実例を挙げます。「ファンタジー小説『界境楼門』の魅力」と「橿原実樹の災難」では、小説や漫画の一部を引用していますが、引用元のページではなく作者ウェブサイトあるいは小説のトップページにリンクを張っています。これは、多少閲覧者に不便を強いることになったとしても、作者の希望を重視したいと思ったからです。一方、「疑問符のつくブックマーク」では、 @nifty デイリーポータル Z の記事へのリンクの方法が @nifty のリンク条件 (http://www.nifty.com/policy/link_copy.htm にあります) に違反していたことを後で知ったので、いったん該当部分をコメントアウトして、許可してもらえないかとメールを書きました。内容が内容だけに、許可をもらえなければ削除するつもりでしたが、快諾していただけました。「このサイトと管理人について」内にある「fcp の発言のリスト」では、発言のたびにリンク条件を調べることは現実的でないと思ったため、無断リンクでもかまわず張って、リンク先からクレームがきたら考えることにしました。また、これらとは別にリンクの報告を兼ねてウェブサイトの感想をメールで書いたこともあります。

まとめ

 僕はウェブで文章を公開する人に究極的な意味での「許可なく批判されない権利」や「無断でリンクされない権利」があるとは思っていません。しかし、リンク条件という概念はこの世界に存在しますし、それは「権利」がないこととは矛盾しません。リンク条件を設定するのも設定しないのも、リンク条件を守るのも守らないのも、すべて自分の選択ですし、自分のためです。僕は、自分の利益とリンク先の利益と閲覧者の利益が反するように感じたとき、最終的にはどれも僕のためであることを認識して、僕がどれを優先するかで行動を決めています。

 拙文「言えない思い」では、気に入っている小説などの更新が止まったときに、「更新してください」「閉鎖しないでください」と僕が言わない理由について、やはり自分のためであるということを書きました。自分のために何がいいか考えるというのは、リンク条件やサイトの更新以外にもいろいろに使える考え方ではないかと思います。

追記

 この文章を書いて公開を始めた後で、みちアキさんのブログ「で、みちアキはどうするの?」を読みました (順番がおかしい?)。無断リンクされたくない人がマイクロソフトにお願いすべきことに書かれている、リンクという名前から想起されるイメージと実際のリンクの違いの説明が非常にわかりやすくて面白いです。

 ページの著者がリンク・無断リンクを禁止しているかどうかとか、個々のリンクが無断リンクかどうかを自動的に調べる方法って、誰か提案していないのでしょうか。当然 100% 正しい判定は無理でしょうけど、やれることはあるように思います。リンク先がリンクされるのを嫌がっているかどうか、リンクをたどる前にわかったら嬉しいような気がします。リンク先が嫌がっているとわかって、リンクをたどるのをやめる人もいれば、嬉々としてリンクをたどる人もいるでしょうけど。

2007 年 1 月 21 日先行公開、同日 (未完成の部分は放って別のことを) 少し追記。著者: fcp / このサイトについて